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Text File  |  1994-11-16  |  2KB  |  34 lines

  1. 559/571   WST00364  和田 光平         黒に染まれば黒くなる(尾張)
  2. ( 8)   94/05/15 16:25
  3.  
  4.    黒に染まれば黒くなる(尾張)
  5.  
  6.   このカルタは,黒(スミ)に染まればと読ませます.交際する仲間によって人は感化
  7. される.「朱に交われば赤くなる」の方が一般的な表現です. 朱と赤のペアに対して
  8. 墨と黒のペアを持って来たという分けです.
  9.   墨を黒と書いて良いものかと考えますが,この用例が尾張にはあります.
  10.  尾張一の宮「真清田神社」はマスミダと読むのですが,延喜式神名帳には「真墨田」
  11. とあります.これを「真黒田」とも書きます.清も墨も古い用例で,長く併用されて
  12. 来たもののようです.尾張氏の祖先,天火明命を祭った神社です.
  13.   「畔」は田のアゼのことですが,クロと読み,平地の小高いところを指します.黒田
  14. は小高いところにある田の意味です.黒部とか黒谷,黒木,黒岩も同じ用例です.
  15.  黒が墨に置換された例では,東京の墨田川も同様の語源ではないかと想像します.
  16.  慈円の「おほけなく浮世の民のおほふかな わがたつ杣に墨染の袖」も住みと墨が
  17. 掛けられた例ですね.
  18.  岐阜県根尾谷の薄墨桜について, 墨と住みを掛けた, 継体天皇の御製と伝わる歌が
  19. あります. この地に薄く住んでいた事を物語る証拠とされる歌です. 
  20.  「身の代( しろ) と遺す桜は薄墨よ  千代に其の名を栄盛( さか) へ止むる」
  21.  小椋一葉さんの「継体天皇とうすずみ桜」にのみ取り上げられている幻の伝承があり
  22. ます.「真清探當證」( ますみたんとうしょう) という伝承文書によると履中天皇の
  23. 皇位継承者であった市辺押磐皇子が, 雄略に狩りにさそわれ, 暗殺されたことから話が
  24. 始まります. その二人の稚児, 億計王と弘計王が, 命からがら滋賀県を通り, 尾張へと
  25. 逃げのびて来た時, 黒田の一里半手前にある松ケ枝郷の森で夜中になってしまった. 
  26.  ところが, 幼い二人は淋しい森で寝るのは嫌だとダダをこねたと言います. 先導した
  27. 市川大臣は困り果てて, ここはもう黒田だけれど, 夜更けだから, ここで寝ましょうと
  28. 二人を安心させたそうです. 
  29.  翌朝, 一里半歩いて今度は本当の黒田大神に到着した.二人は神宮に上がり,ここは
  30. どこかと聞かれた. 市川大臣はここが実は黒田とは答えにくい. とっさに, ここは
  31. 真の黒田大神ですと答えたと言うのです. それ以来「真黒田神社」と呼ばれるように
  32. なったと. ここに登場する, 弘計王の子が後の継体天皇です. 
  33.                          東海支社)和田 光平
  34.